車を綺麗に保つ方法のひとつにコーティング剤を使うという選択肢がありますが、
いざ作業を始める際には、どのようなことから手を付ければ良いのでしょうか?
車のコーティング剤を使う前にまず説明書に目を通すと、
「車をきれいに洗車してください」
「汚れや水垢、鉄粉等は洗浄剤等を使ってきれいに除去し、洗剤でしっかり洗い流してください」
と書いてありました。
車を購入したばかりの時のようにピカピカの綺麗な状態であれば、
コーティングを施す前に下処理に手間や時間をかけてボディ表面を綺麗にしておく必要はそれほどないのかもしれません。
しかし、ボディに傷や水垢、汚れが付いたままであれば、せっかく車を綺麗に保つためにコーティング剤を施工しても、
その汚れたところまで一緒にコーティング剤で覆うことになってしまいます。
車のコーティング剤には、店舗で扱われているような作業等も専門的で高額なコーティングから、手軽に自分で施工することができるものまで様々な種類があります。
今回は、市販のもので手軽にコーティングを施すことのできる商品を使う場合に、コーティング施工前の準備に関すること、洗車や車表面を綺麗にするときに知っておくとよい点などについてまとめました。
色々な車の汚れ・落とし方など
まず大まかに、先ほど例に挙げた説明書の文面にある「水垢」や「鉄粉」といったように、
車はどのような汚れ方をしやすいのか?さらに、汚れの種類ごとに綺麗にする方法などを簡単にご紹介します。
①水垢(無機汚れ)
水垢は、雨等の水分が排気ガスといった空気中の塵・埃・砂などと混ざり、それが乾くことで生じます。また、水道水に含まれるミネラル分が固まることで生じることもあります。
雨ジミやイオンデポジット※1、ウォータースポット※2といった汚れは、無機系の汚れに分類されます。無機汚れは、カルシウム、マグネシウム、シリカ、塩素、ナトリウム、鉄などのミネラルが固まってできる汚れです。
※1 自動車のボディ表面についた水道水や雨水・雪などの水滴に含まれているミネラル成分(無機物質)だけが、水が蒸発した後に残って白く固まったものがイオンデポジットです。一度付着すると簡単には取り除けなかったり、放っておけば除去できなくなることもあるので早めに取り除く方がよさそうです。
※2 ウォータースポットは、車のボディについた水滴が太陽の光を受けレンズの働きをしてその部分の温度が上がり、塗装面が焼けてしまうことで発生します。軽く付いている汚れとは違って塗装面自体が傷んだ状態になっていると、通常のクリーニング剤を使った洗車では落ちません。
イオンデポジットが進行するとウォータースポットとなり、ひどくなれば塗装面が陥没してしまったり穴が空いてしまうこともあるので、研磨作業を行わないと綺麗な状態に復元できなくなります。
水垢の落とし方は?
イオンデポジットやウォータースポットの落とし方は、塗装面に浅く付いた傷と同じように軽いものであれば、主にコンパウンドを使った研磨作業で削り落とすことができます。
コンパウンドとは、一般的に液状やペースト状の研磨剤のことを指します。
コンパウンドの粒子は0.2μm(ミクロンメートル)=0.0002mm(ミリメートル)~と非常に細かいので、車のボディのカラー塗装面の上に塗られた透明な皮膜であるクリア層を、とても薄く削ってなだらかにしていくイメージです。
人間の髪の毛の直径が60~80μm(=0.06~0.08mm)ということなので、コンパウンドの粒子が削る層の薄さを感じていただけると思います。
②油膜・油汚れ(有機汚れ)
油汚れの原因は、多くの場合、油分を含んだ排気ガスや工場から出る煙などが空気中に広がって、水や雨と混ざったものが車に付着することや、それによって施していた古いワックスやコーティング剤、グリス(※車や機械などに使われる潤滑剤)が溶けて劣化することなどです。
油汚れの落とし方は?
付いたばかりの汚れであれば、カーシャンプーで比較的簡単に落ちると思います。
しかし、長い時間そのまま放置していれば落ちにくくなるので、早めに汚れを落としておくか洗車の頻度を増やすなど、こまめに綺麗にしておくことがおすすめです。
カーシャンプーの他に油汚れを落とす例を挙げると、ガラスであれば車専用のガラスクリーナーや、液体をスプレーして洗い流すタイプや、ウェットシートで拭き取るタイプのもの、クリーナーを塗って磨いてから洗い流すタイプなど、
様々な種類の商品があります。
➂砂やほこり、黄砂、花粉
黄砂も花粉も、どちらも細かい粉が車の表面に降り積もることがあります。
黄砂は、細かいとはいっても砂ですので、指で触ってみるとザラザラとします。拭き取ろうとして、そのままタオルなどでこすったりすれば車に傷が付いてしまいます。
花粉は、息を吹きかけると舞い上がるように軽く、水で濡らすとねっとりとします。
汚れが黄砂や花粉である場合は長時間落とさずにいると、黄砂に含まれる鉱物が雨で固まったり、
雨などに濡れて水分を含んだ花粉から排出されるペクチンという物質が乾燥して、
コーティング面や塗装面に浸食し、腐食や歪みの原因となることもあります。
砂やほこり、黄砂、花粉の落とし方は?
砂埃のような汚れであれば、水で洗い流すことができます。
水を使ってしっかり洗い流すだけでも、こまめにほこりや砂の汚れを落としていれば、綺麗な状態を保つのに効果的です。
砂でも花粉でも、水で洗い流す前にスポンジやクロス、タオルなどでこすってしまうと、ボディの塗装面に傷を付けてしまうので注意が必要です。
カーシャンプーを使う場合でも、まずは高圧洗浄機などの水を使うか、たっぷりの水を使ってしっかりと洗い落とし、こすり傷が付かないようにしましょう。
④鉄粉
車体やホイールに鉄粉が付着する原因は、ブレーキダスト※3であったり、
その他にも例えば線路の近くや金属加工をしている工場の近くを走ることでも付着するリスクはあります。
車の塗装面に鉄粉が付着したまま放置すれば、鉄の粉が酸化して塗装にしっかり固着した状態となってしまいます。
黒や茶色っぽい点々とした取れにくい汚れが付いていたり、指で車のボディ表面を撫でたときにザラザラとした感触があります。
※3 ブレーキダストとは、ブレーキをかけたときにブレーキパッドとブレーキローターが摩擦することにより表面が削れて発生した金属の粉のことです。
鉄粉の落とし方は?
鉄粉が車のホイールに付着した場合は、水洗いしたり、カーシャンプーを使って落とすか、
落ちなければブレーキダスト専用の洗浄剤やホイールクリーナーを使って落とします。
除去用の商品には、液体を吹きかけて化学反応により鉄粉を溶かしてから洗い流すタイプの専用の洗剤や、
鉄粉除去スポンジ・鉄粉除去クロス・鉄粉除去グローブ・鉄粉除去ラバーパット、鉄粉除去用粘土といったように、
様々な素材を使い塗装表面を撫でて鉄粉を取り除くタイプのものもあります。
車のボディの塗装面に鉄粉がしっかりと付いてしまった場合は、塗装に鉄粉が酸化して固着した状態になっています。
落とし方は、ホイールと同じように、鉄粉除去用の液剤を吹きつけて汚れを分解して落とす方法や、クロスや専用パット・鉄粉除去粘土を使って取り除く方法などがあります。
ただし、粘土での落とし方などで磨き傷ができてしまうこともあり、鉄粉除去をした後さらに研磨作業が必要になってくる場合もあります。
車体だけでなくホイールにも、汚れを防ぐ効果のあるコーティングがありますので、汚れを除去した後に施工しておくのも良いと思います。
⑤ピッチ・タール
ピッチ・タールは、車のフロントバンパーや側面の下側にタイヤで跳ね上げられた道路のアスファルトの破片などが、黒く点々と塗装表面にくっついたものです。
ピッチ・タールは時間が経って固まるとシャンプー洗車では落ちません。
専用の液剤でピッチ・タールそのものを分解すれば除去可能ですが、シミが残ってしまうこともあるので早めに除去するのが良いでしょう。
ピッチ・タールの落とし方は?
ピッチ・タールを取り除く時は、塗装面にこびり付いた汚れを専用のクリーナーを使って分解して落とすのがよいでしょう。
車の塗装面に使用できる汚れ取り専用の粘土などで取り除く方法もありますが、こすることによって塗装面に傷が入ることもあるので、もしそのような作業に慣れていなければ液剤の化学反応により汚れを分解してから洗い落とす方法が手軽かもしれません。
スプレーで吹きかけて強くこすらずに拭き取るだけのものや、クリーナーにコーティング成分が入っているものもあります。
汚れがそれほどこびり付いていなければ、高圧洗浄機などの水圧だけでも落ちる場合があるので、状況に応じて使いやすいものを試してみてください。
液剤や車用粘土などを初めて使う際は、一度目立たない部分で試してから使うようにしましょう。
ピッチ・タール汚れへの対策としては、ボディにコーティングを施しておくことが少しでも汚れが付きにくくなったり、汚れが付いた時にも落としやすくなるでしょう。
⑥塩害、雪
塩害といえば海の近くで潮風が原因のようなイメージが浮かびますが、その他にも原因となる場面があります。
海沿いの場所でなくても、台風によって巻き上げられた海水が風に乗って遠くまで運ばれる可能性や、
積雪の多い地域や高速道路の凍結防止のために使われる融雪剤・凍結防止剤の成分によって、車が塩害にさらされる可能性があります。
雪汚れの多くの場合は単に雪や泥汚れに限らず、融雪剤が撒かれている影響などもあるのです。
融雪剤や凍結防止剤に使われている成分は、主に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムです。
その地域の最低気温や状況の違いによって使い分けされているようです。
これらの成分には金属を腐食させるものが含まれており、雪や雨など水分と混ざって車のボディに付着して鉄を錆びさせたり、塗装やコーティングを浸食します。
塩害への対処方法は?
塩害を引き起こす原因に触れた場合、例えば雪汚れや潮風や台風の雨に遭った時などはできるだけすぐに洗車をしたり、
コーティングの効果が弱まっていればメンテナンスをしておくと少しでも錆の広がりを抑えられます。
車のボディに傷や錆があれば、すぐに対処しておきましょう。錆をそのまま放っておくと範囲が広がってしまいます。
こまめにしっかりと車全体を水で洗うことで、錆を予防しましょう。
⑦落ち葉、樹液、鳥の糞、虫の死骸
木の下に車をとめることがあれば、木の樹液や落ち葉が汚れの原因になることも稀にあります。
山道を走った後なども枯れ葉や虫が車に付着したままになりやすいです。
車に降り積もった落ち葉に雨が当たると水分を含んだ状態になりやすく、長く放置していると汚れが固着して取れにくくなってしまいます。
落ち葉、樹液、鳥の糞、虫の死骸の落とし方は?
落ち葉は、車のフロントウィンドウの下部分やフロントグリル、エンジンルームやトランクの中に入り込んだりします。
見つけたときには手で落ち葉などを取り除くと思いますが、フロントグリルやエンジンルームが冷えている状態のときに除去してください。
車庫に駐車できない場合など、フロントガラスの凍結や樹液・鳥の糞の防止用にシートカバーもありますので、活用するのもよいでしょう。
樹液は木から出ますが、落ち葉に付いていて車に付着する可能性もあります。また、距離があっても風により飛散する場合もあります。
放置して固まったものを無理にはがそうとすると車を傷つけてしまいます。
お湯を使って固まってしまった汚れをふやかすことで取れやすくなる場合もありますので、まずは試してみるとよいでしょう。
鳥の糞は、酸性やアルカリ性の成分が含まれていて、そのまま放置していると車の塗装にダメージを与えてしまいます。
樹液の時と同様に、こすり取ろうとすればボディに傷が付く可能性があります。
水で洗い流すか、固まってしまっていれば水分を含んだティッシュや布などをかぶせて柔らかくしてから強くこすらずに取り除きましょう。
虫の死骸は、たんぱく質(=アミノ酸やリン酸)やカルシウムなどが含まれているので、車に付着したまま放置していると酸性やアルカリ性の成分によって塗装面が浸食されてしまう可能性があり、シミになったり陥没してしまいます。
まとめ 車を綺麗にする手順など
車に付く汚れも落とし方も様々ありますが、これまで挙げてきた例を書き出してみると、次のような汚れの種類がありました。
①水垢(無機汚れ)
②油膜・油汚れ(有機汚れ)
➂砂やほこり、黄砂、花粉
④鉄粉
⑤ピッチ・タール
⑥塩害、雪
⑦落ち葉、樹液、鳥の糞、虫の死骸
まだ固着していない水垢や砂ぼこり・黄砂、潮の塩分・融雪剤、鳥の糞・虫の死骸は、
先にたっぷりの水で洗い流すか高圧洗浄機などの水圧を利用して流し落としてから、落ちにくい部分は専用の液剤を使って落とすといった手順になります。
鉄粉やピッチ・タール、固着した水垢の汚れなどを落とすときは、
それぞれの除去用クリーナーをつけてから水で洗い流す手順になるものが多いようですが、ピッチ・タールなども付き方によっては強い水圧であれば落とせることもあります。
汚れの性質や汚れ方の度合いに合わせて落とし方を工夫してみましょう。
水垢や油汚れなどが頑固な落ちない汚れになってしまっていたり、有機物でも無機物でも様々な汚れが原因となって塗装がはがれてしまうことがあります。
汚れごとに必要な道具を活用し、より効果的な方法で対処して車を綺麗に保ちたいですね。
そして、汚れを綺麗に取り除いた後は、車の塗装表面を守るための対策としてコーティングを施しておくのがよいでしょう。
コーティングをする前には、きちんと車の汚れを落としておかなければ美しい状態でコーティングをすることができません。
一度に多くの種類の汚れを落とそうとして、それぞれに時間がかかると大変です。汚れに気が付いたタイミングでできるだけ早めに洗い流したり、こまめに取り除いておくと比較的作業が楽なうちに綺麗な状態を保つことができるのではないでしょうか。
それぞれの車に合う、暮らしのスタイルに合う汚れ対処法を見つけて、さらにコーティングで汚れや傷から守り、車のある生活を快適に送りましょう。